パスケ家のネゴシアン“家宝”シリーズとの出逢い。香りは熟したメロン、味わいにパパイヤやマンゴー、余韻にパッションフルーツの南国果実爆弾コニャック。
(以下 中森さんの案内より)
【輸入経緯】
コニャック地方グランド・シャンパーニュ(GC)地区エラヴィル村にあるJEAN-LUC PASQUET(ジャン-リュック・パスケ)は14haの自家畑で栽培から瓶詰まで一貫して自家で行うプロプリエテール・コニャックです。
Jean-Lucさんから息子で現オーナーのJeanさんに引き継がれてからは、アメリカ生まれの奥様Amyさんと二人三脚で自家のプロプリエテール・コニャックだけでなく、コニャックの素晴らしさを側面からも伝えようと廃業された他家からトレーサビリティがしっかりした優良原酒を購入して自家で熟成させるネゴシアン(ウイスキー業界でいうボトラーズ) 商品まで新しいことにも着手されていて、世界各国への輸出も広げ、Whisky Live Parisに出店しウイスキーラバーを惹きつけるなど、気炎万丈な勢いある造り手です。
先代Jean-Lucさんの時代に造られたオーガニック転換以前のコニャックは日本には20年近く少量だけ輸入されていました。その中で初訪問は自身がコニャックを廻るようになってから約10年経過となる2020年1月と遅くなりましたが、Jeanさん夫婦が世界各国へ事業を広める良きタイミングでもあり、初訪問から3度DORASプライベートボトル(PB)をリリースしてきました。絶滅危惧種フォル・ブランシュ種コニャック(2010年蒸留10年熟成)のファーストリリース、その2年後のセカンドリリース(2012年蒸留10年熟成)と、1995年にオーガニック転換した以降のブドウと1haだけ持つフォル・ブランシュの畑から造られたコニャックを自社輸入により日本に初上陸させることが出来ました。
初訪問時、次の年に初リリースとなるフォル・ブランシュをPBとして1番に先行予約し、その後Jeanさん夫婦からネゴシアン商品を貯蔵庫でテイスティングさせていただき記憶に残るコニャックとの出逢いがあり、パスケ家との最初のPBが当時(コロナ禍直前)まだ輸入免許を取得する前で田地商店(信濃屋)様の輸入によりネゴシアン商品(Petit Champagne Lot.73)として生まれました。
小規模農家の原酒は大手メーカーとの契約により樽を納め、それにより大手メーカーと農家の良き共存関係が生まれますがパスケ家は大手メーカーに原酒を売らず、またコニャック造りを廃業されて世に披露されることがなくなった原酒を中心に購入し、自家貯蔵庫で熟成も行っています。栽培から瓶詰まで一貫して行う農家のプロプリエテール・コニャックでは自家のコニャック造りにだけ目を向けるのが通常ながら、1つの原酒を大切にしようとコニャック全体を広く見る姿、この原酒を購入に至る経緯からも、コニャックへの尊意と愛を初訪問の際ダイレクトに感じました。
今年(2024年)3月1日より49日間の渡欧では勿論コニャック廻りは重要な旅程であり、約2週間のコニャック廻りでのアポイント取りをパズルのように組み込み、3度目の訪問となるパスケ家には「ここ2回フォル・ブランシュのPBをリリース出来たので今回はネゴシアン商品をPBにしたいです」と希望する味わいをリクエストし、訪問時にカスクサンプルを用意しておいて欲しいと要望を出しました。要望を受け取っていただき、午前中の訪問予約で奥様Amyさんより「新築した自宅で一緒にランチもしましょう」と、今回のコニャック廻りでも午前中にアポを取る際に連日、パスケ家からも有難いことに昼食のお誘いをいただいておりました。
4月5日10時にパスケ家に到着してJeanさんAmyさんと再会しました。早速貯蔵庫で樽から原酒テイスティングとなり、その後新築されたご自宅へ案内いただくとリビングルームにリクエストしておいた13種類のカスクサンプルが用意されていてテイスティングを始めました。どの原酒もポテンシャルが高くそれぞれの個性が強いため集中力を必要とするテイスティングとなりました。途中Amyさんに「昼食まで集中して1人で原酒に向き合ってもいいでしょうか?」と言うと「勿論です。じっくりとテイスティングしてください」と了承いただき、リビングで1人になりました。悩ましい程素晴らしいコニャックに囲まれた中からPBとして求める酒質や個性を照らし合わせ、目星を付けた3種の原酒を今度は消去法テイスティングを行い、1986年GC地区原酒で間違いないと不動の結論となり、パスケ家のネゴシアン原酒は一期一会で、次の機会にはもう売り手が決まってしまうため決定を伝えました。その後Jeanさんご夫婦とスタッフお2人で5人での昼食も、初訪問の際や2度目の訪問でも大爆笑ランチとなったよう、今回も笑いの絶えない楽しい時間とおもてなしを頂戴し、午後14時の部からは新生DORASで扱うコニャックを幾つもテイスティングして良き仕入れもでき、午前午後と沢山の原酒に向き合い達成感ある訪問となりました。
この日はもう1件15時半のアポイントメントをこなしコニャック町のアパートメントホテルに帰ってシャワーを浴びるとそのまま11時間寝てしまい、原酒に向き合い完全燃焼した日となりました。
帰国してPBへの輸入のやり取りを始め、276本分けていただけるご提案をいただき、5月末にボトリングされました。また、特別なラベル制作だけでなく、現地に送って出荷前に貼っていただくバックステッカーの輸入元情報もAmyさんが写真からバックラベルに取り込んで作成してくださり、今回もステッカー制作費や国際郵便のコスト削減へと繋がり、自社輸入へと進めてきました。
GC L.86の内容はテイスティングコメント欄で物語を添え、南国果実爆弾コニャックとの出逢いをご紹介させていただきます。
【テイスティングコメント】
今回Pasquet(パスケ)家にネゴシアン商品でのプライベートボトルとして希望する味わいをリクエストしていたところ、造り手も様々違う13種のカスクサンプルを取り寄せしていただきました。パスケ家でテイスティングして決めた原酒は、グランド・シャンパーニュ(GC)地区の超一等地“黄金の3角地帯”ジュイヤック-ル-コック村(表ラベルに記載されています)にあるGolvet(ゴルヴェ)家が1986年収穫のユニ・ブラン種100%を蒸留したコニャックでした。決定を伝えた後にパスケ家が改めてゴルヴェ家に連絡を取り、これによりゴルヴェ家と初めての取引が行われるようになったとのことです。
現在5代目となるカミーユ・ゴルヴェ氏、彼女の父親である4代目パトリスさんがこの1986の樽を蒸留しました。パトリスさんは1982年に3代目の父親から引き継ぎ、1962年に父親が設置した12hlの小さな蒸留器でこのコニャック1986を蒸留しました。残念なことに、パトリスさんは昨年まで蒸留を続けていたこの蒸留器を誤った操作によって破壊してしまい、現在はボトルでの販売はしていません。その後現在に至るまでにゴルヴェ家は新しい6つの蒸留器を持ち、他のブドウ栽培者のために蒸留することを意味する“Bouilleur de Peofession(蒸留専門家)”となりました。パトリスさんは正式に引退しましたが、家業を継いだ娘のカミーユさんをサポートするためにまだ働いています。そのようなゴルヴェ家の歴史、今後“日の目を見ない樽”となったコニャックとの物語を聞けたことで、日本にゴルヴェ家の“ Trésors de Famille(家宝)”をご紹介出来ることを光栄に思います。
蒸留後に1年の新樽期間を経て、その後350Lのリフィルコニャック樽へ移してから36年間そのまま熟成され、半地下のセラーに保管されていました。毎年、パトリスさんは少量の天使の分け前を補うために樽にその分の少量の浸透水を満たしており、パスケ家でのカスクサンプルには51.3%と書いてありましたが、輸入前に機関に正確なアルコール度数を検査してもらうと48.01%と結果が出たことからラベルに48%の表記となりました。
砂糖やカラメルは使わずノンフィルターでボトリングされたピュアなコニャックの香りは熟した甘いメロン、味わいにパパイヤやマンゴー、余韻にパッションフルーツの南国果実爆弾。果実だけでなくキンモクセイの花の香りも加わります。味わいが開いてくるまで時間が必要で重心が沈んだボディとなるGC地区超一等地産ならではの秘められたポテンシャルには先を見る愉しみがあり、明るい味わいがキャッチーで魅惑的なコニャックです。
Commented & tasted by Yasutaka NAKAMORI
実店舗と在庫を共有している為、品切れの際はご容赦下さい。
商品名は 略記号 + 商品名 + 度数/容量 + [商品番号]
となっています。
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